ミスティクスがルイ・マチダのWNBAへの順応のために行なっていること

インタビュー日本語訳
この記事は約6分で読めます。

こちらの記事のフル日本語訳です。

シーズン開幕前のある日の練習の約30分後、ルイ・マチダとマイーシャ・ハインズアレンがロッカールームから何やら茶色い袋を持って出てきた。それはチームの練習施設に残っている人へのギフトだった。ハードな練習後、体育館内は閑散としていたが、メディアの人間やサポートスタッフが残っており、インタビューなどのコミュニケーションを取っていた。

マチダとハインズアレンはその残っていた全員の元へと周り始めた。マチダは大きな笑顔でそれぞれに近づき、ハインズアレンがマチダの耳元で短いフレーズをささやく。

「Snacks from Japan」マチダはたくさんのライスクラッカー(お煎餅)を配りながらそう繰り返した。お菓子は英語で言うと「Happy Turn」、「Soft Salad」そして「Kabukiage」というものだった。

それがハインズアレンが才能に溢れた世界的なポイントガードをチームに迎え入れるために行ったことである。英語を話さないマチダがWNBAの最初のシーズンを開始するにあたり、彼女の居場所を作ること、それがハインズアレンが取り組んだことだった。言語の壁がありながらもミスティクスはこの新しいバックアップポイントガードを受け入れている。

「チームメイトとはやはり言葉の壁があります」と通訳のミッキー・タケイを通じてマチダは言う。「けど、多くの人、チームメイトみんなが通訳なしで私と話そうとしてくれて、それは本当にありがたいことですし、もちろんバスケは世界共通言語なので、その私たちの言語を使ってプレーして、だんだんと慣れていっているところです。」

ミスティクスは何年もの間、新しい選手を迎え入れるその雰囲気や、チームが一つの家族のように感じられることにおいて特筆されてきた。レイラニ・ミッチェル(元オーストラリア代表)、テリサ・プレサンス(現ラスベガス)、その他若い選手達は同意をするだろう。

ミスティクスの過去数シーズンのチームの成功は、これらに2つによるものだとも考えられる。新しく加入する人を歓迎すること、そして、言語でコミュニケーションを取れないとしてもシーズンを通して居心地の良い場所と感じてもらうことである。それはマチダの加入後、彼女がシーズンを過ごすにあたっても同じだった。

「マチダの毎日のチアリーダーはマイーシャだと思います。マチダに言葉を教えたり、チェストバンプをしたり、他にも色々教えているようです」とマイク・ティーボーコーチは言う。「素晴らしいことだと思います。バスケという共通言語はありますが、マチダが歓迎されていると感じてくれたと思いますし、チームメイトも皆彼女と楽しい時間を過ごしています。」

マチダが馴染めるようにミスティクスが行ったことは、トリックorトリートのように全員にお菓子を配ったことだけではない。ワシントンモニュメントのツアー、ナショナルモールへスクーターで観光に行った。(安全かどうかは分からなかったようだが)

WNBAのシーズンにおいて、マチダにとってはアウェイでの試合が新しい経験となっている。日本では長距離を移動しての遠征はない。特に日本語を話せる人がどこに行っても少ないことで、アウェイにおいては食事の面で苦労をしている。そのためミスティクスはチームで食事を取ることが多い。また、日本国内では時差はない。常に時差ボケがあることや、スケジュールからくる疲れはマチダにとって新しいことである。実際それは、ベテランのWNBA選手だとしても完全に慣れるものではないだろう。

仲間意識を築くことはチーム全体での努力の賜物であり、それがコート上にも表れることが望ましい。国外リーグ等での経験がある選手にとっては、チームメイト全員が同じ言語を使用しないことはよくあることだと感じられるだろう。

「みんなが協力の姿勢を見せていると思います」とハインズアレンはNBCスポーツに語った。「私はみんなより少しだけその姿勢が強いだけで、ミスティクスは新しい選手を歓迎することについては本当に素晴らしいチームです。シーズンを通してずっといる選手だろうが、トレーニングキャンプだけ、数日間だけだろうが、ただ、チームの全員が歓迎する姿勢を持っているんです。一つの家族のようなものです。私が少し目立っているかもしれないですが、ロッカールームではみんなが迎え入れる雰囲気があります。それによって、彼女(町田選手)が日本からこちらの生活への移行において、やるべきことにより集中できるようになります。」

ハインズアレンとマチダのやり取りから、ハインズアレンが積極的なことがわかる。言語としてはコミュニケーションができないかもしれないが、2人の間では絶えずやり取りが交わされる。どちらも何を言っているか理解できないため、大部分は笑いである。ハインズアレンがマチダのアパートにも何度も訪問していることを含むたくさんの試みにも関わらず、学べた日本語は多くない。

「本当に、Naniだけしか覚えていないです。その言葉はいつも彼女が言っているから。何って意味です」とハインズアレンは言う。

「つまり、何も理解していないけど私が話し続けていると、彼女が何が必要?なんて言っているの?どういう意味?って言う感じで、それで私はゆっくり簡単に説明しようとする。だから本当に私が覚えて使う言葉はそれだけです。」

マチダも同様にまだ英語をマスターしていない。しかしDCに来てから単語やフレーズをいくつか覚えている。その多くの英語はコート上で使うもので、コールするプレーやチームメイトが言う言葉である。特定の英語が実際に日本語で何を意味するかは理解していないかもしれないが、ある発音があった時は特定のシチュエーションにおいて彼女が何をするべきかを理解しているようだ。

ナターシャ・クラウドのバックアップを務める役割を与えられていることを考えると、マチダは他の選手よりも多くのことを求められている。シーズン前半においては1試合平均14分の出場で2.7アシストを記録している。決して多くはないように聞こえるが、アシストパーセンテージにおいては40%でリーグ3位につけている。アシストリーダーであるクラウド、ロサンゼルス・スパークスのジョーディン・カナダに次ぐ順位である。(アシストパーセンテージ:出場時、チームメイトの決めたシュートの何%がその選手のアシストによるものだったのかを表す数値)

出場時間と言語が限られている中で、出来ることを見つけようとしている。チームメイトとの直感的つながりがあることは助けになっているようだ。コート上で最も合わせやすい選手の1人がエリザベス・ウィリアムスである。ロスターの中でもっとも海外経験豊富な選手である。ダイナミック・デュオとしてベンチメンバーの主力となっている。

「言語というのは難しいです」とウィリアムスは言う。「バスでは隣同士に座っているのでそれが最初です。ミッキーが通訳なので、何か聞きたいことがあれば彼を通して話しますが、本当のところはボディーランゲージで会話しているようなものです。ハイタッチやただ単に笑顔など、それが通じ合う方法です。なのでそう言ったことをするよう意識しています。」

ミスティクスの組織全体、多くの人にとっての新しいチャレンジとなっている。チームとティーボーは彼女の加入に際して新しいトレーナーとコーチング・スタッフを雇った。マチダの才能とパッサーとしての視野の広さは、チームがマチダにチームの一員として感じてもらうための労力よりも価値が高いと感じている。

しかしそれはマチダとチームメイトにとって成長を止まらせることはない。ミスティクスが優勝した2019年のシーズン後からベテランのクリスティ・トリバー(現ロサンゼルス)がいなくなり欠けていたバックアップポイントガードをミスティクスは見つけたのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました