復帰してくるアリーシャ・クラーク選手ってすごそうだけど一体何者??プレースタイルや泣ける経歴。

ワシントン・ミスティクス
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ミスティクスは開幕から3連勝!

3試合目は特に、町田瑠唯選手がスタメン出場し、ようやくいつものプレーが垣間見えたのに加え、ベンチメンバーの活躍、全員の貢献で強豪ラスベガス・エースィズに勝利をおさめました。

しかし・・・

喜びも束の間、町田選手のアシストから堅実なシュートを決めてくれていた、ハードシップで契約をしていたステファニー・ジョーンズ選手が今後カットされるという残念なニュース。

ロスター枠に限りがあり、ルールとはいえ、一緒に戦った仲間がいなくなるというのは悲しいことです。

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復帰するアリーシャ・クラーク選手

ステファニー・ジョーンズ選手を押し出す形にしてしまうのがアリーシャ・クラーク選手の復帰です。

左がアリーシャ・クラーク選手。愛犬スライちゃんとともに😍

ミスティクスとは2021年2月に契約。しかし、そのすぐ後3月にフランスのチーム在籍中に怪我をおい、手術を余儀なくされ、2021年のWNBAのシーズンは全休しています。

ちなみに怪我というのはリスフラン関節損傷で、「1つまたは複数の足根中足関節を破綻させた中足部の骨折および/または脱臼」だそうです。

参考画像
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一体どんな選手か?!

現地記者さんたちには大きく取り上げられていますし、チームとしても大きく取り上げているような?よっぽどすごい選手なのかな、と思われている方もいると思います。

近年の活躍

180cmのフォワード。現在34歳。

どんな選手かを一言で表すと、リーグ屈指のディフェンダーでありながら、正確なスリーポイントシューター、そしてマッチアップの相手が小さければポストプレーもできる選手です。(ちなみに私の最も好きな選手のひとり😊)

2012年から9年間シアトル・ストームでプレーしており、同チームで2018、2020シーズンと優勝。

2019、2020はオール・ディフェンスチーム(ファーストチーム、セカンドチーム)に選出、リーグベストのスリーポイント確率の成績を残し、特に近年めざましい活躍をしています。

ミスティクス、ティーボーコーチはクラーク選手の獲得をずっと狙っていたとメディアに語っています。フリーエージェントやトレード、あらゆる方法で画策していたとのことです。

いつから狙っていたかは覚えていないが遅くとも2016年に同選手が最初のフリーエージェントになっと際からとのこと。その際はシアトルと再契約となりましたが、その後トレードで当時所属のシアトルにオファーをしたが、断られたそうです。

同選手が2021年にフリーエージェントとなった際に叶った形になります。

アリーシャ・クラーク選手にとっては10年近く過ごしたシアトル。思い入れも強いでしょうし、「第二のホーム」という位置付け。決して簡単な決断ではなかったそうですが、ワシントン・ミスティクスが迎え入れてくれる雰囲気、家族のような暖かさを感じたとのこと。

当時もミスティクスのメンバーだったデレダン選手、PGのクラウド選手に相談し、自分がそのチームの一員になりたい、と感じたことから決断したと語っています。

学生時代

この部分だけみると、オフェンスもディフェンスも超優秀で、コーチに欲しがられる逸材で超エリート選手じゃん!と見えるのですが、実はWNBAでは遅咲きの選手です。

それを知ってもらうためには学生時代まで遡る必要があります。(今回も長くなってしまいますね😅)

高校時代

高校時代、陸上部とバレーボール部に入り、そこでの活躍を見て才能を感じたバスケ部のコーチがバスケ部にもリクルート。

最初は普通のシュートやゴール下シュートすら決められず、バウンズパスが何かも知らなかったそうで、前途多難とコーチは感じたようですが、上達に必要なことに一所懸命取り組む姿勢があったそうです。

特に高校レベルでは背が高いほう。有利に攻められるポストプレーのフットワークの基礎をここで学んだそうです。

クラーク選手は「バスケの試合の流れや動きを学ぶことに引き込まれた。継続して取り組めば上手くなれることを肌で感じた」とコメントしています。

大学時代

大学では(WNBAの他の多くの選手と同様)スーパースターでした。

1、2年目は高校時代に親身にリクルートしてくれたBelmont大学でプレー。

他の選手に比べ背が低めのポストプレーヤーながらリバウンドと得点でチームトップ。地区の新人賞、プレーヤーオブザイヤーを獲得。

ですが、実は大学2年生の時までは、彼女自身はプロバスケ選手になるとは思っていなかったようです。その時に当時の大学のアシスタントコーチに「プロになれる力がある」と言われ、3年目でより大きな大学、Middle Tennessee大学へ転校。

大学3、4年の年は平均得点でNCAA全体1位。引き続き地区でのプレーヤーオブザイヤーなども受賞し輝かしい大学キャリアを過ごしています。

その成功の背景には隠れた努力がありました。

NCAAの当時の転校に関するルールにおいて、転校した後1シーズンは試合に出場できないという決まりがあります。つまり、BelmontからMiddle Tennesseeへ転校後、1シーズン試合に出られていないということです。

当時のコーチが「ここまでのハードワーカーを見たことがない」というほど必死にスキルアップに取り組んだそう。その1年間ではサイズの小さいポストプレーヤーという不利さを有利に変えるよう、スリーポイントなどのアウトサイドのスキルを磨いたそうです。

それが3年、4年の際の大活躍につながったのですね。

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WNBAへ

ドラフト2巡目指名。しかし・・・

大学でのめざましい活躍ながら、WNBA関係者、ドラフト関係者からは「サイズの小さいポストプレーヤー」としてしか見られなかったクラーク選手。

2010年のドラフトでサンアントニオ・スターズ(現ラスベガス・エースィズ前身)から2巡目15位で指名されるも、今年2022年のドラフトどころか毎年同じようなことが起こっていますが、2巡目選手が開幕ロスターに残るのは当時でも難しいこと。開幕を迎える前にチームからカットされてしまいます。

(同チームに同じくカットされた選手に現シカゴ・スカイのアリー・クイグリー選手がいます。こちらも遅咲きのプレーヤーですが、現在リーグNo.1シューターといっていい方です。)

当時の写真

一度海外リーグに行き、その後再度WNBAにチャレンジするもまたしてもカットされ、自信を失い、本当に落ち込んだそう。しかし、バスケで生きていく道を諦めきれず、その後も海外リーグでプレーを続けます。

シアトル・ストームへ

そして大学卒業後3年目となる2012年、シアトル・ストームのトレーニングキャンプに呼ばれたことからその流れが変わります。

面白い話なのですが、クラーク選手はすぐカットされるかもしれないから、生活に必要な荷物をスーツケースの中に入れたままキャンプやシーズンを過ごしていたことを明かしています。(すぐ帰り支度ができるよう)

その後開幕ロスターの登録に残ることになった後も、あまり自信を持つことができず、いつカットされるかと不安がるクラーク選手に対して、チームの組織全体からのサポートがあったとのこと。当時のアシスタントコーチや、スーパースターで現在も健在のスー・バード選手、それ以外にもティナ・トンプソン選手という後に殿堂入り選手を含むレジェンドやベテラン選手たち。

今季からアトランタ・ドリームのヘッドコーチをつとめるタニーシャ・ライトコーチもこの時のチームメイトで、クラーク選手に「プロ選手」とは何か、このリーグで残るためにどのようなプレーヤーになるべきか、といったことを教えてくれたそう。

殿堂入りプレーヤーのトンプソン選手からも継続的にサポートを受けていました。2年目になってもスーツケースに荷物に入れたまま過ごすクラーク選手を励まし続け、さらに同選手は2013年に引退を表明したのですが、観客あふれるホームアリーナで「(クラーク選手は)WNBA、そしてシアトルにいるべき人で、これからも長くいることになるから、スーツケースを片付けなさい」とジョーク混じりにスピーチ。

クラーク選手にとって、それが初めて「ここにいられるプレーヤーなのかも」と感じた瞬間だったそうです。(引退選手にそんなこと言われたら泣くー🥲)

3年目以降

3年目に1シーズンフルの契約を勝ち取り、4シーズン目はスターティング5に名を連ねるほどに成長。5シーズン目には複数年契約を勝ち取ります。

この少しずつの成功の「層」によってさらに自信をつけ、いつカットされるかわからないという不安を取り除くことにつながったとのこと。

この間クラーク選手はチームの事情によって、複数のポジションの役割を担っています。あるときはポイントガードあるときはポストプレーヤー。複数のポジションができるのも、高校のときのフットワーク、大学時代のアウトサイドスキルの習得が基礎にあると言えるでしょう。

現在はオフェンスだけではなく、ディフェンスでも複数ポジションを守れるリーグ屈指のディフェンダーとして高い評価があります。ディフェンスについてもプロ入り後に意識をあらため、ベテラン選手から吸収、そして上手い選手やオフェンスの動きを研究したと言っています。

そして、チームは若手選手の活躍、成長、トレードでチームのスタイルに合う選手の獲得で、ついに2018年に優勝を成し遂げます。

クラーク選手にとっての成功というのは自分が属しているチームの成功から感じるものが大きいそうで、自分が貢献し、チームの成功に繋がっていることで自身の価値を感じることができたそうです。

2019年のミスティクスの優勝を間に挟み、コロナ流行の影響でIMGアカデミーを会場として行われた2020年の短縮シーズン。そこでもシアトルは高いチーム力を発揮し優勝しました。

個人的にこの2018シーズンまで、同選手はあまり目立たず、とても過小評価されていた印象があります。他の選手に比べて身体能力が高いわけでもないのであまり目立たず、優勝によってようやく日の目を見た、評価されたと思っています。

が、ティーボーコーチはずっと目をつけていたんですね。さすが、がーさす。ティーボーコーチのすごさ、ぜひみてください。

ワシントン・ミスティクスでのデビュー戦

そして冒頭で触れた移籍と手術。

移籍後ようやく2022年にミスティクスの選手としてデビューを飾ることになります。

おそらく明日(5/14)のダラス・ウィングス戦で復帰できるというように言われています。それについてのインタビューがこちらです。

ここまで長かった。学校の初日みたいな感じ。少し緊張しているが楽しみ。

(手術した)足は問題ないと思う。筋力も戻っている。たまに大丈夫か気になることはあるが、最近の練習ではプレーに集中できている。

こちらの練習の動画でロンTを着ている最初ボールを持っているのがクラーク選手です。

この動画だけではわからないですが、もうチームの器用度の能力値がすごいことになっています。器用なフォワードのトップレベルの選手を集めたようなチームになっている気がしています。

ディフェンスはこんな感じです。ガードからポストまでディフェンス。この背景には徹底したスカウティングレポートの勉強(相手の得意プレーなど)があるそうです。

人となり

さらにこの選手のいいところ(私が好きなところ)は、その人となりです。

デレダン選手のような(明日公開予定のデレダン選手ストーリー最終章お楽しみに)暖かさ、優しさがありながら、ユーモアがある方です。

先日のベンザン選手の活躍に対してのインタビューではこのように言っています。

Linsanity*ってみんな覚えている?この活躍はBenz-sanityって呼んでいいと思うとチームメイトと話していた。

どれだけリーグで生き残るのが難しいか知っているし、私にとっては3度目でようやく得られたことだった。

若い選手がプレーして楽しみながら試合にインパクトを残すこと、そしてどれだけハードワークをしているか知っているだけあり、素晴らしいことだと思う。

リーグに所属する選手として、チームメイトとして、恐れずプレーし、活躍してくれたことは嬉しいこと。彼女自身も加入してからチームにとって素晴らしい存在になってくれている。

だからBenz-sanityって呼ぼうと思う。

*Linsanity(リンサニティー):2012年にNBAのニューヨーク・ニックスで大旋風を巻き起こした台湾系アメリカ人選手、ジェレミー・リン選手の活躍が名前のLinとInsanity(狂気、尋常でない)をあわせた造語で「Linsanity」と呼ばれた。その前まで下部リーグとの間を行き来していたが、そこから一気にブレークした選手。

これを聞くと、ご自身の過去と重ねているのかもしれないですね。ご自身もハードワークしてきたこと、それでもカットされたことなど。

さらにこのインタビューに対するベンザン選手のツイート。

「いつもミスティクスの選手が才能に溢れた選手ばかりでかしこまるほどすごい。そして、クラーク選手、ハインズアレン選手の優しさにもおそれいるほど感謝している。」

もうなんなのこのチーム🥲 開幕して3試合なのに心を打たれ続けるんですけど。

あまりロッカールーム内や選手同士のコミュニケーションや関係がどうなっているかわからないですが、優しい先輩といった感じなんでしょうね。マイーシャ先輩はまたこれで株が上がってしましますね。

最後に

予想通り長くなり、最後まで見ていただいた方はありがとうございます。

クラーク選手が町田選手のドライブに合わせてスリーを決めてくれる姿がもう浮かんでおります。そしてさらに総合ディフェンス力があがったロックダウンチームディフェンス🔐

明日の相手はダラス・ウィングス。開幕を見ると心配するほど試合内容が悪かったので、現在完成度の高いミスティクスからすれば優位に試合を運べると予想されます。

ですが、得点力の高いガード陣をはじめ、爆発力があり、決して油断はできないチーム。

クラウド選手の不在をまた全員バスケで埋めて、クラーク選手が復帰するのであれば初陣に花を飾れることを願っています。

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