(2022年3月14日の記事)
東京オリンピック2020では町田瑠唯選手が、
- まず予選ナイジェリア戦で15アシストでオリンピック記録を更新
- さらに準決勝のフランス戦で1試合18アシストを記録し自身の記録を更新
これらの記録によって町田選手の名前が世界的に知られることとなり、先日の会見でもご自身の口からこの記録がWNBAでの機会へとつながったということを話されていました。
さらにWリーグでもアシストを量産していますね。
本日はその「アシスト」について掘り下げていきたいと思います。
そもそもアシストって、ボールを受けた選手がフリースローになったらカウントされる?WNBAのアシスト記録はいくつ?パス上手以上に重要な3つの要素、これらについて書いていきます。
そもそもアシストって?どこまでがアシストって見なされるの?
調べたところ、NBAのルール上にその定義があり、それがWNBAにも適用されているようです。
The NBA defines an assist as the last pass to a teammate that directly leads to a basket.
NBAルールより
直訳すると、直接点数につながる、チームメイトへの最後のパスという意味です。
なんとなく分かりますね。例えば速攻で2−1の時に味方に最後に出すパスとかですね。
日本代表で町田選手のカットインに対する赤穂ひまわり選手のバックカットの合わせへのパスとかだね?
そういったものは分かりやすいですね。
(当たり前ですが)必ず得点につながっている必要があり、2ポイントでも3ポイントでも1回の得点に対して、アシストは1つのみ発生します。
直接点数につながる、の直接という部分が判断が難しいところで、通常パスを受け取った選手が2ドリブル以内にシュートし得点になればアシストとのことですが、例外もあるようです。
なお、「ナイスパス!」となった後、パスを受け取った人へのシュートファールがあり、フリースローとなって、そのフリースローを決めたとしてもアシストにはなりません。
良いパスすぎてゴール下を外すと「アシストキラー」なんて呼ばれたりしますが、ファールをされてしまっても「アシストキラー」だったんですね^^;
WNBAのアシストリーダーはどんな選手たち?
町田選手とマッチアップするポイントガード(以下PG)選手は以下の記事で紹介してきました。
特にアシストを得意とする選手はどんな選手がいるでしょうか?
2021シーズン アシストリーダー
こちらが2021レギュラーシーズンの1試合平均アシストランキングです。
注目選手を見ていきましょう。
Courtney Vandersloot(コートニー・ヴァンダースルート)選手 | シカゴ・スカイ
173cmのベテランPG。決して速さはないですが、外も打てるし、ドライブしながらコート全体を見ることができる選手です。
ドラフト以降ずっと同じチームに所属し、約9割スターティングPGを務め、12年目を迎えています。昨年はキャリア初、念願のWNBA優勝を成し遂げました。
昨年の圧倒的なアシスト数での受賞を含めて6回アシスト王に輝いています。
チームとしても彼女が何ができるか、どのように組み立てれば彼女やチームが活きるかというのがわかっているでしょうから、彼女が良いタイミングでボールを持ち、ディフェンスがよればアシスト、という形のプレーをいくつも用意することが予想されます。
じゃあ2022シーズンもこの選手が受賞しそうだね
・・・と思ったのですが、
所属するシカゴ・スカイがこのオフシーズンの間にインディアナ・フィーバーに所属していた若いベルギー代表PG Julie Allemand(ジュリー・アレマンド)選手を獲得。
スピードがあって外もあるかなり良い選手なので、ある程度プレータイムをその選手と分けることになります。
そう考えるとヴァンダースルート選手の出場時間も多少は短くなるので、その分もちろんアシスト数が減ります。どこまでアレマンド選手が出場するかにかかってきます。
ただ、ヴァンダースルート選手としてはアシスト王はすでに何度もとっているので、全く執着はないはず。それよりもチームの2連覇を目指してやってくるでしょう。(アレマンド選手の補強を含めて2連覇の可能性は高いと思われます。)
Natasha Cloud(ナターシャ・クラウド)選手 | ワシントン・ミスティクス
町田選手の新しいチームメートであり、ミスティクスのスターティングPGである183cmのクラウド選手。
2021シーズンではアシスト数平均2位という成績でした。
しかし、ヴァンダースルート選手とアレマンド選手がプレータイムをシェアするように、この選手も町田選手と出場時間をシェアすることになるはずなので、2022シーズンはアシスト数が下がることが予想されます。
また、町田選手の加入によって、スコアリングへの意識が高くなる&コーチからもそう指示があるはず、なのでアシスト数は下がるのではないかなと思います。
Sabrina Ionescu(サブリナ・イオネスク)選手 | ニューヨーク・リバティ
大学時代に女子では珍しいトリプルダブルを何度も記録し、大学において男女あわせて誰も達成したことのない、大学キャリア通算2000得点、1000リバウンド、1000アシストを記録。
2年前になり物入りでWNBAに入った180cmのイオネスク選手。コロナの影響で縮小された最初の年で足首を負傷。その後復帰してからあまり目立たないなと思っていたのですが、アシストランキングにはしっかりと入っていました。
個人的にはこの選手がアシスト王になる可能性が高いのではないかと予想。
背景として、チーム内に正式なバックアップPGがいないこと(できる選手はいますが正式PGではない)、移籍選手や怪我からの復帰選手を含めフィニッシャーがある程度いることが挙げられます。
しかし同時にアシストキラーをしてしまいそうな選手も多い気がします^^;。もう1人ぐらい得点を見込める選手が入るとさらに強くなりそうな&イオネスク選手が大量にアシストを生産できるチームになりそうです。
イオネスク選手が点をとりにいかなきゃならない状況になるとアシスト王は厳しくなりますね。
Chelsea Gray(チェルシー・グレイ)選手 | ラスベガス・エースィズ
スピードはないですが、強靭なフィジカルを持つ180cmのグレイ選手。
トリッキー&おしゃれパスが多い印象のこの選手。ディフェンスをギリギリまで引きつけてパス、ができるのでその分アシストも増えます。
しかし、1位、2位の選手と同じく、同チームにKelsey Plum(ケルシー・プラム)選手という代表レベルの選手がいるので、2021シーズンと同様に時間をシェアすることになり、アシスト数が劇的に増えることはないと予想されます。
また、チームの核でフィニッシャーのひとりだったセンター Liz Cambage(リズ・キャンベージ)選手の他チームへの移籍も、アシストの面からすると影響があるでしょう。
Sue Bird(スーバード)選手 | シアトル・ストーム
リーグ最年長41歳で、2002年から同チームに所属するバード選手。
チームのスタイルがどちらかというと全員でパスを回すスタイルなので、アシストが劇的に増えることはないかなと予想されます。
キャリア通算アシスト数では2017年に1位の記録を塗り替えてから、自身の記録を更新し続けています。
こちらが2022年3月時点でのキャリア累計アシスト数です。
もちろんバード選手のように長年プレーすればその分有利ではあるんですが、同時に安定的に記録すること、さらにそれには怪我をせず身体のコンディショニングを保つことも重要なので、決して長いキャリアだけでは達成できることではありません。
太文字が現役選手なのですが、ヴァンダースルート選手が4位につけていますね。彼女は怪我が少ない選手ですし、どれぐらい現役を続けるかにもよりますが、いつか記録を抜くのではないかなと個人的には思います。
5位以下で順位を上げそうな選手
Skylar Diggins-Smith(スカイラー・ディギンス-スミス)選手、Erica Wheeler(エリカ・ウィーラー)選手の2人はチーム事情的に、他に計算できるPGが少ないことでアシスト数が増えると予想されます。
(ディギンス-スミス選手はロシアに拘束されているグライナー選手の状況次第なところあり)
ですが、二人とも攻撃的PGで組み立て型伝統的PGではないので、アシスト王まではいかないでしょう。
WNBAアシスト記録
シーズン平均アシスト記録
このカテゴリーはヴァンダースルート選手の独壇場となっています。
- 1位:9.95アシスト(2020年)
- 2位:9.09アシスト(2019年)
- 3位:8.60アシスト(2018年)
以下5位まで彼女が記録保持者です。すごいですね。
1試合アシスト記録
こちらもヴァンダースルート選手が2020年に18アシストを記録しています。
町田選手のオリンピック記録と同じですね^^
1クォーター、ハーフでのアシスト記録
1試合はプレータイムの都合上難しそうだから、1クォーター、前半、後半どちらかの記録であれば破れるのでは?!と確認したところ、
- 1クォーター:8アシスト(リンゼーウェイレン選手)
- ハーフ:11アシスト(ティーチャ・ペニチェイロ選手)
共に引退されている選手ですがレジェンド選手たち。うーん、どうでしょうか。これよりも1試合18アシストの方が達成できそうに思えてしまうのは何故だろう。
アシスト王に有利となる要素3つ
2021年のランキング入り選手を見ていくとわかるように、個人の能力はもちろん重要ですが、それ以外にも重要なことがあるようですね。
1. チーム事情
バックアップに優秀なPGがいることは、チームとしては心強く、良いことですが、アシスト王の観点からすると、やはりプレー時間減れば必然的にアシストも減ってしまいます。
ミスティクスに関してはクラウド選手がいますが、町田選手と同じタイミングの起用も考えられるので、環境としては悪くはないのではないかなと感じます。
2. チーム内にバランス良いスコアラーが複数いる
当たり前ですが、得点をしてくれないとアシストにはなりません。
また、一人の強力なスコアラーというよりも、ディフェンスが守りづらくなるよう複数の得点源があることで、アシストも容易になります。
1位のヴァンダースルート選手の場合も、各ポジションに良いスコアラーがいて、パスをちらせることができるのでこの記録となっているとも言えるでしょう。
昨年、ミスティクスのハワード選手が2位につけていることが示すように、ミスティクスにおいてもそれが当てはまります。
センターが1人いなくなってしまったのは大きいですが、フォワードに点が取れる良い選手を集めています。
3. 自分でもスコアできる得点力
先程のランキングとスタッツを見ると、クラウド選手以外どの選手も平均得点が10点以上というのが面白い部分です。
やはりアシストだけではなく、得点を取れる選手でないと相手チームからすればスカウティングしやすく、対応しやすいため、このような結果になっているのではないでしょうか。
町田選手の活躍予想
町田選手のアシスト数はどうなりそう?
未知数です。(👈じゃあ書くなし)
どれぐらいクラウド選手とシェアするのか、他に3番手のPGが誰になるのか、それがどれぐらいの選手なのかにもよります。
先ほども書いた通り、またご本人が会見で口にされていた通り、ご自身の得点力を伸ばせるかも重要になってきます。
今シーズンのWリーグで10.6得点8アシストを記録しているので、ざっくり6得点5アシストぐらいでしょうか。(根拠なし^^;)
その他評価される点
WNBAのアシストランキングの選手等を見ると、町田選手が評価される部分はアシスト数だけではないことが考えられます。
スピード
アシストランクに入った選手等は、決してスピードがある選手等ではありません。(もちろん普通からしたらめっちゃ早いんでしょうが)
一方町田選手は早くて、さらにパスも正確なので、そこはとても評価されると思います。スピードがありつつ視野を確保することができる数少ない選手でしょう。
アシスト-ターンオーバーレシオ
アメリカでよく注目されるPGのスタッツの一つとして、アシスト-ターンオーバーレシオというものがあります。
簡単にいうと1つのターンオーバー(ボールを相手に奪われるミス)に対して、いくつアシストを記録しているか、という比率を表す数字です。
これが多ければ多いほどミスが少なくアシストが多い、つまり良いPGと言われます。
目安として3以上が良い選手と言われることが多いのですが、さすがバード選手は2021年のランキングで一人だけ3以上を記録していますね。
町田選手もオリンピック時のスタッツや、特に近年のWリーグの成績では同レシオが良いので、WNBAでも同じようにプレーすることで高い評価につながるでしょう。
最後に
そんな予感は書く前からしていましたが、長くなりました。お読みいただきありがとうございます。
個人のスキルだけでなくチーム事情も関わってくるアシスト王への道。
日本のいちファンからすると、町田選手にとって欲しいとは思いますがチーム事情的に難しそうなのが現実です。
しかしそれ以外に評価されるであろう部分があるということをこの記事を書いていてあらためて確認できました。
ご本人が希望されるかはわからないですが、WNBAのチームに継続して所属し、いつかはアシスト王をとったところを見てみたいですね。
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